改修工事の醍醐味 ―「修繕」と「改良」で建物に新たな価値を生み出す―

改修工事とは、単なる「修繕」だけではありません。現時点での不具合を解消しながら、同時に使い勝手の改善やバリアフリー化など、建物の機能を向上させる「改良」を組み合わせた工事です。つまり、改修=修繕+改良という考え方が、改修工事の本質なのです。

本記事では、実際の改修工事の現場から、問題解決と機能向上を両立させた3つの事例をご紹介します。現場で直面する課題にどう対応し、どのような価値を生み出したのか。改修工事の醍醐味を感じていただければ幸いです。


事例1:都内工場の防音対策 ―クレーム解消と作業効率の両立―

課題:不十分な防音対策による近隣クレーム

都内とある工場の防音対策工事 シャッター更新 施工前

都内のとある工場では、シートシャッターとカーテンによる防音対策を施していましたが、近隣住民からの騒音クレームが相次いでいました。調査の結果、既存の内壁は断熱材とコンパネのみで、開口部にも防音カーテンを使用しているだけという不十分な状態でした。

改修内容:防音性能の向上と作業効率の改善

この工場では、以下の改修を実施しています。

開口部の改修
  • 防音シャッター2枚を新規取り付け
  • 従来のシートシャッター+防音カーテンよりも十分な防音性能のある製品を設置
  • シャッター鉄骨内部にも防音材を入れ込み、防音効果を高める
    (シャッター業者、鉄骨業者の図面を読み込み、音が漏れる箇所を潰しておく)
内壁・天井の改修
  • 既存の内壁に吸音材を貼り付け
  • 天井にも吸音効果のあるボードを施工
  • 多方向からの防音効果を高める構造に
照明環境の改善
  • 工場内が暗いという問題も同時に解決
  • 照明器具を更新し、さらに増設することで照度を大幅に向上
  • 作業環境の改善にも貢献

成果:目に見える効果

顕著な効果が現れています。

  • シャッター前での騒音:80dB → 60dB(20dB減衰)
  • 道路境界での騒音:70dB → 50dB(20dB減衰)
  • 騒音規制法の基準値(日中40〜60dB以下)になった

工場内で働く作業員さんや、2階で仕事をしている事務員さんからも「音が小さくなって働きやすくなった」と喜びのお言葉をいただきました。
また、近所の方からは「業務を縮小したのかと思ったくらい、音が聞こえなくなった」と言われたとのことです。

この事例は、防音という「修繕」だけでなく、作業効率向上や照明改善という「改良」を加えることで、工場全体の価値を高めた好例です。


事例2:千葉県商業施設 ―安全性と清掃性の向上―

課題:劣化した風除室の床と段差問題

千葉県のある商業施設で大規模修繕工事を実施中、風除室の床に大きな問題が見つかりました。既存のゴムマットは劣化が激しく、自動扉との間に段差が生じてしまっていたのです。さらに、ゴムマットの隙間にゴミが溜まりやすく、清掃の手間もかかっていました。

改修内容:床材変更と嵩上げによる抜本的解決

この課題に対し、以下の改修を実施しました。

  • 劣化したゴムマットを完全撤去
  • 床面をモルタル補修にて嵩上げ
  • 床材をタイルカーペットに変更

成果:安全性と清掃性の同時向上

清掃性の向上

ゴムマットの隙間にゴミが溜まる問題が解消され、タイルカーペットにすることで日常清掃が格段にしやすくなりました。

安全性の向上

床面を嵩上げしたことにより、カーペットの沈み込みがあっても段差に当たらない構造に。来店客がつまづくリスクが大幅に減少し、バリアフリー性能も向上しました。

この事例では、単なる床材の交換という「修繕」に留まらず、嵩上げという工夫を加えることで、安全性と清掃性という「改良」を実現しています。


事例3:団地管理事務所の屋根防水 ―現場判断で最適解を導く―

課題:予想外の荷重問題

団地の管理事務所で屋根防水工事を計画していました。元々はアスファルト防水の上貼り工法を予定していましたが、調査の結果、既存で8層ものアスファルトシートが貼られていることが判明。計算すると、既存の屋根には約35kg/㎡もの荷重がかかっていました。

改修内容:急遽の施工方法変更

このまま上貼りすると、さらなる荷重増加で構造的な問題が発生する可能性がありました。そこで、予算との調整を行いながら、以下の対応を実施しました。

  • 端部の既存シートを部分的に剥がす
  • 新たなシートを施工
  • 屋根への荷重を軽減

成果:安全性を確保しながら予算内で完了

当初計画を現場の実情に合わせて柔軟に変更することで、建物の安全性を確保しながら、予算内での工事完了を実現しました。この判断により、将来的な構造的リスクを回避することができました。

この事例は、現場での的確な判断と、予算と安全性のバランスを取る改修工事の本質を示しています。


改修工事の醍醐味とは

これら3つの事例から見えてくる改修工事の醍醐味は、以下の点にあります。

1. 問題を発見し、解決する面白さ

工場の防音問題、商業施設の段差問題、管理事務所の荷重問題。それぞれの現場には、表面的には見えない課題が潜んでいます。それを発見し、最適な解決策を導き出すプロセスこそが、改修工事の醍醐味です。

2. プラスアルファの価値創造

単なる「修繕」に留まらず、使い勝手の向上、安全性の向上、作業効率の改善など、プラスアルファの価値を生み出すことができます。これが「改良」の魅力であり、建物に新たな命を吹き込む瞬間です。

3. 現場判断と柔軟性

計画通りにいかないのが改修工事。しかし、だからこそ現場での判断力と柔軟性が問われます。予算、工期、品質のバランスを取りながら最適解を見つけ出す。それが改修工事の専門性であり、やりがいでもあります。

4. 依頼主の課題解決に直結

近隣クレーム、来店客の安全、建物の構造的リスク。改修工事は、依頼主が抱える切実な課題を解決します。その成果が数字や形として見えるからこそ、達成感も大きいのです。


まとめ

改修工事は、単なる「直す」作業ではありません。「修繕」と「改良」を組み合わせることで、建物に新たな価値を生み出す創造的な仕事です。

現場ごとに異なる課題、予算の制約、構造上の制限。そうした条件の中で最適解を見つけ出し、依頼主の期待を超える成果を出す。それこそが改修工事の醍醐味であり、私たちが日々現場で感じているやりがいなのです。

これからも、一つひとつの改修工事を通じて、建物に新たな価値を生み出し続けていきます。

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